トレンディーな職業の方を中心にノマドスタイルがナウい時代だと伺っています。ノマドスタイルとは遊牧民のように、同じ場所に定着することなく、場所を選ばずさまざまなところで仕事をするスタイルだと理解しています。
携帯電話と、軽くて薄いのに高性能なモバイルPCやタブレット、Wi-Fiなどの通信環境の普及で私たちが子どもの頃にSFとして思い浮かべてきた本格的モバイルコンピューティングがいよいよ実現しました。
そうなると多忙な方々が移動しながらでも、あるいは出先でちょっとした空き時間に仕事を片付けられるというのはまったくもって理想的な環境です。
筆者(The laboのウェブマスター)も東京や京阪神などの地方を行き来して仕事をしているので、原稿を書いたり、新幹線の中でもメールのやり取りをしたり、画像を加工してウェブサイトにアップしたりとモバイルコンピューティングの恩恵を享受しています。
でもそれは出先でだから仕方なくやっていることで、きちんと東京と大阪に拠点があるから仕事(いい仕事とは言いません)ができているのです。
出不精なので基本的には外に出ずっぱりなのが嫌いというのものありますが、外では仕事が滞ります。だから無理やり外で仕事をしようとは思いませんし、できる限り内勤の割合を確保したいと思っています。
公言するとノマド方面やシンパからさまざまな異論をいただくかもしれませんが、そんな立場からはっきり言います。
「スタバやコワーキングスペースでいい仕事ができるわけがない。」
※本稿はけっしてスタバの存在やビジネスモデルを否定しているわけではありません。またスタバだけではなくブルーボトルやタリーズ、ベローチェ、ドトール、ルノアール、珈琲の青山、あるいはこじゃれたカフェなどすべてを「スタバ」に集約しました。
その理由は3つのリスクです。
1.ストレンジャーがいる空間で仕事をするリスク
スタバやコワーキングスペースなどは基本的に見知らぬ人、あるいは顔くらいしか知らない関係のストレンジャーのいる空間で仕事をするということです。
そのような環境では企業秘密や個人情報など機密情報が漏洩するリスクが限りなく大きくなります。
トイレに行っている間にPCや情報端末を盗まれる可能性がないとはいえません。また、画面を盗み見たり通話を盗み聴きされる可能性もあります。
出先で空き時間に、というレベルでなくほぼすべての時間をそういった空間で仕事をする人と私は取引できません。BYOD(Bring Your Own Device)すら認められない時代です。多くの大企業もそうではないでしょうか。
2.ノイズが多いというリスク
集中力がある人でもカフェやコワーキングスペースで集中できるでしょうか。カフェやコワーキングスペースはしょせんアウェーです。自分が完璧に集中できる快適な環境はつくれません。むしろノイズが多いくらいです。
行きつけの場所でもお気に入りの場所やイスが空いているとは限りません。空調が自分好みになっているとは限りません。音楽も気にいらなかったり、逆に気にいりすぎるものがかかっていて集中できなくなります。もちろんこれはホームたる自分の固定のオフィスでもありえることです。でもそれはアウェーよりはコントロールしやすいはずです。
そしてなによりもストレンジャーが多いことで、どうしても他人の身なりや行動、会話に気をとられがちです。虫の居どころが悪いと場合によっては向かいに座っている人の顔が気にいらないとか、貧乏ゆすりが気にいらないということでイライラしたりもします。これでは仕事になりません。
よく知らない人だからこそちょっとしたことが気に食わないということになります。だから仕事場からストレンジャーはなるべく排除すべきなのです。
※もちろんスタバから他の客全員を追い出すとかコワーキングスペースを貸しきるとかそういうことではありません。
気分転換的にちょっと外に出る、というレベルでない限りノマドは集中できないのです。
3.要らない人脈を抱え込んでしまうリスク
以前あるノマド方面というかシンパに持論を展開したところ、「外に出ないと人脈もできないし、情報が入ってこない」と反論されたことがあります。
それは逆です。外を出歩いてばかりいるから、人脈もできないし情報も入ってこないのです。ふつうはひとつひとつの仕事を丁寧にこなしていれば重宝がられて人も情報も集まってきます。望まなくても紹介されたりして人脈は膨れ上がっていきます。
中途半端なレベルの仕事を粗製乱造しているから、クライアントや取引先に敬遠されるのです。だからいつまでたっても人脈や情報網ができないのです。
そして人脈というのは持ちすぎると切り捨てたくなることも多くなります。ましてやノマドでできる人脈はもともとストレンジャー。あまりいい結果をもたらさないと思います。
知り合いの知り合いであれば、信用にかかわるのであまり変なことはできません。でもストレンジャーどうしの人脈は基本的に打算の上に成り立ちます。
その状況ではwin-winはお題目にしかすぎません。どちらか上手く立ち回れる側が果実を独り占めします。そのような取引や協業によってあなたは被害者か加害者になります。だから異業種交流会とか「●●飲み会」みたいなのも多くは要注意なのです。
では、どうすればいいのか。結論は事務所を持つか(持っている人は基本的に事務所で仕事をする)、きちんとメンバーが固定されたシェアオフィスやレンタルオフィスを利用すべきなのです。
これが私たちのポジショントークだと思う人は、ノマドスタイルを貫いていただいていいとは思います。でもこの3つのリスクを避ける方法を考えておくべきだと思うのです。